回遊性の強化について

次世代のモビリティ

山下ふ頭の再開発では、ふ頭内はもちろん、隣接する山下公園とその周辺も含め、あたかもテーマパークのように徒歩での散策を安全に楽しめる交通環境にしたいものです。

 

特に共創エリア内は、消防、警察などの緊急自動車や作業車など特別に許可された自動車以外は、エリア内にクルマが入らないような設計が良いでしょう。ただ、山下ふ頭は広大な敷地を有していることから、遊歩道を中心としながらも徒歩移動をサポートするための路面公共交通システムを導入することは、展望として重要なものとなります。

 

具体的には、テーマパークを走る豆汽車のように、例えば桜木町駅から来た LRT(ライトレールトランジット:次世代型路面電車システム)、電動の路線バスなどの路面公共交通と自転車が、ふ頭内をゆっくりループ状に片回りして遊歩道や水上交通との結節を兼ね、ループ線そのものが公共交通ターミナルの役割を果たすかたちが考えられます。更には、行政が環境対策を推進しているなかで、次世代エネルギーを軸としたマイクログリッド型発電施設の導入案が出ているようですが、これはLRT、電気バスとの親和性が高く、交通インフラと一体化して整備する事で、交通由来の環境負荷を大幅に減らすことが期待されます。山下ふ頭内の交通機関の設計によってはLRT、電気バスの公開型車両基地とマイクログリッド設備、自転車のデポ設備なども兼ね備えられるでしょう。

 

山下ふ頭の再開発を通じて、歩行者中心の交通環境やエネルギー利用の革新が実現されれば、当地は横浜や地域の発展に大きく寄与する、先進的なエリアとなるのではないでしょうか。

 

藤村建一郎

グラフィックデザイナー

NPO法人 横浜にLRTを走らせる会 理事

 

近隣地域や団体との連携の必要性

横浜の特色は、半径2.5キロの範囲内にMM21、元町、中華街、関内、野毛、伊勢佐木町、横浜橋などがあり、観光地、ビジネス街、ショッピングエリア、飲食街など、異なる特性を持つ街が混在しています。さらに、「臨海部」と呼ばれる新しい街と、歴史ある「吉田新田周辺エリア」では、景観や遊び方が大きく異なります。これら新旧の対比を短時間の移動で楽しめることも、横浜の多彩な魅力の一つです。山下ふ頭の開発を通じて陸と海上の交通網を再整備することは、市民の往来や観光の機会を増やし、将来の地域経済を促進するためにも大きな意義があります。

 

また2025年に石川町桟橋が完成することで、今後河川活用への関心が急速に高まるでしょう。この流れを最大限に活かすためには、河川と海上交通の拠点が不可欠となります。山下ふ頭に、陸上交通と水上交通の双方利点を備えた新たな交通拠点(駅)が併設され、河川と港の回遊性が高まれば、陸と海の間で市民や観光客の流動性が活性化します。更に山下ふ頭と本牧や堀割川経由で根岸を水路で結ぶことなども出来れば、周辺地域の活性化に繋がり地域資産の開発にも期待できます。

 

しかし、交通手段が整備されるだけでは十分ではありません。周辺地域や地域団体が一体となってメリットを享受できる環境を創り出さねばなりません。共創エリアは文化・芸術や社会福祉的なプラットフォームとしての役割を担うほか、市民や地域・経済団体が集い連携し、地域に活力を与えるスケールメリットの高い企画開発を担う拠点である位置づけも大切です。共創エリアはその大きさや趣の異なる景観や施設を利用して、大小関わらずイベントの常時開催が可能です。その日常的に繰り返される市民活動や試みは、横浜の将来への大きな地域資産となるばかりではなく、現在横浜市が開催している「横浜トリエンナーレ」や「横濱ジャズ・プロムナード」「横浜開港祭」などの大きなイベントを後押し、より精度の高い国際色豊かな催しに発展させるのに大いに貢献できるはずです。